AIプロトタイピングの落とし穴
AIツールで高忠実度のプロトタイプを素早く生成できるようになった。だが、その速さがチームの意思決定を歪めている、とAnna E. Cookは指摘する。
問題の核心は「アウトプットと思考の混同」にある。AIが見栄えのいいUIを数分で吐き出してくれるので、チームは戦略やUXの検討をスキップしがちになる。しかし磨き込まれたプロトタイプは、ユーザーテストでノイズを生む。被験者がボタンの色や余白の細部に反応してしまい、検証したかった本質的な問いが埋もれる。
Cookが繰り返し問うのは3点。このプロトタイプの目的は何か。誰に見せるのか。何を検証したいのか。この問いに答えられないままAIで画面を量産しても、間違った方向に速く進むだけだ。
興味深いのは、Cookの実体験として、Wordで作ったプロトタイプのほうが目的が明確なぶん良い結果を出したケースがあるという話だ。ツールの洗練度とプロトタイピングの成果は比例しない。
「speed ≠ quality」「output ≠ thinking」。AIが生産性を上げてくれる局面は確かにある。ただ、プロトタイピングという行為の本質は「作ること」ではなく「学ぶこと」であり、その順序を間違えると、修正コストが最初から丁寧に作るより高くつく。